■ コンセプト
小説、学術書、カタログに使われる明朝体として、モダンでフトコロの揃った設計思想に伝統的な活字・写植系譜のフォルムを持った、今までにない明朝体を再構築しました。
この明朝体の発想の原点は、常々従来の本文用明朝体の種類が限定され、もっと本文内容や用途に合わせた明朝体が必要であると感じていたところに始まっています。
過去の様々な本文明朝体の特徴を精査し分類したところ、それぞれの書体はその特徴ごとに全くフォルムが異なります。そして文章内容側からすれば、純文学でも古風なものから現代の内容があり、推理小説でも、探偵小説、ミステリ、冒険チックなもの、時代小説でも、江戸時代、明治期、学術的なものなどがあり、また、出版対象年齢層も様々であったりします。
過去の明朝体はそれぞれの特徴に特化していますが、文章内容や出版対象の微妙な違いを使い分けるほど網羅されてないように思います。
清和堂明朝体は、それらとは対照的に、文章内容においてかなり広範囲のジャンル・対象年齢に汎用的でオールマイティで使えるように、伝統的なフォルムを踏襲しながらモダンで使いやすい設計思想で作成された新時代の明朝体となっています。
【 作者の一言 】
創作にあたって、通常は「他社との差別化」、「商品としての独自性」、「パッとした印象を与える」etc 商品開発の切り口、手法がありますが、
実は「清和堂明朝体」制作に関しては全くそれらの手法を取らないで制作しました。
「自分が純粋に欲しい物を作る」といった内発的なインスピレーションを大事に制作していきました。
塊の中から、イメージをした形を掘り起こす、彫刻制作に似ているような気もします。結果的に自分の好きな書体のイメージが
入っているかもしれません。柳宗悦が論じる茶の湯の精神の中で、長い間に淘汰される洗練度についての記述があり、
書体も茶の湯の名陶器の如くあらねばとの思いで制作しました。同時に工業製品としてバウハウスの「形態は機能に従う」の定義に
寄るところでもあります。本文では、可読性、視認性、長く読んでいて疲れない、等の機能が最優先されるでしょう。
読む行為は脳科学理論とも直結すると思います。さておき、「純粋に欲しい物を作る」ことをこれからも進めたいと思います。